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Milano Report

猛暑の夏が一瞬にして去り、9月2週目ごろから一気に気温が下がり始めたミラノ。通常一番暑い6月に肌寒い雨続き、昨年は暑い日が続いた9月もあっという間に雨天の日々、猛暑が続く日本とは対照的に夏が短かったので、今月は秋を楽しむイベント情報と共に夏の名残りを楽しむレストラン、お菓子、対岸の国でのプチバカンスまでレポートします。

秋空の下で美しいヴィッラを楽しむ、コモ湖デザインフェスティバル

コモ湖を臨む素晴らしい立地に建つヴィッラ・グルメッロ。その歴史は深く遡ること15世紀、当時はブドウ畑や果樹園などに囲まれた素朴な建物だったが、16世紀後半にミラノの銀行家によって再建されコモ貴族の別荘となった。複数の建築家がファサードや増築、修復を手がけ、1870年には温室も建設されたが、1954年に伯爵夫人によって公園と隣接する施設とともにヴィッラがコモの病院に寄贈され、美術品や調度品はコモ市民博物館に寄贈された。その後、ヴィッラは老人ホームとなり、更には製糸場の事務所として30年使用されたのち、数年間放置されていた。そのような変遷を経て2006年ようやくコモ商工会議所の呼びかけでヴィッラ・デル・グルメッロ協会が設立され文化的イニシャティブの場としてヴィッラが修復されたのだ。この美しい歴史的建造物が息吹を取り戻した数々の重要なイベントの一つが「コモ湖デザイン・フェスティバル」。コモ市の歴史的中心部と湖周辺での一連のイベントを通して展開される展示、考察、研究のひとときであり、歴史的な場所、未公開の場所、忘れ去られた場所での展示、講演、イベントが開催される。今回で第6回目となるこのフェスティバルの目的は、歴史、デザイン、建築、芸術の間に独創的な対話を築くことである。今年のメイン会場となったヴィッラ・グルメッロでは、温室も利用して各国から集まった若手デザイナーの展示を、建物の中では色とりどりのベネチアングラスが、そして巨匠や新進気鋭デザイナーによる家具、調度品などが窓から差し込む秋の柔らかい光の中で美しく輝いていた。「現在を理解し、未来を方向づけるためには、過去を知らなければならない」と、古代歴史家のトゥキュディデスが教えているように、このデザインフェスでは庭の樹木や美しい湖に囲まれた中でたくさんの発見と出会いが生まれる。さて、来年はどんな素敵な会場になるか、今から楽しみだ。
 ヴィッラ・グルメッロは一般開放しているが、通常は庭園のみなため、イベント開催時に行くことがお勧め。ミラノから車だと約50分、電車でも40分ほどとバス5分という近さ。天気が良ければコモの駅から湖畔沿いを25分ほど歩いても気持ち良い。

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Lake Como Design Festival 2024.9.15-22
Associazione Villa del Grumello
Email: info@villadelgrumello.it
庭園公開:9:00 – 17:00 (日曜日は18時まで)*随時サイトにて要確認

太陽をいっぱい浴びたカラブリア料理の老舗「ドンジョー」

南イタリアのカラブリア料理が好きで、予算を抑えたいなら、「ドンジョー(Dongiò)」はうってつけの店だ。赤唐辛子はアメリカ大陸が原産だが、イタリアのブーツのつま先のカラブリア人ほど、この植物とうまく付き合う術を身につけた土地は世界でもほとんどない。1987年にピエトロ・クリスクオーロ氏が妻と共にオープンした家族経営のレストラン、「ドンジョー」は、今では3代目が経営し、伝統的なカラブリアの味をシンプルで賑やかな雰囲気の中でミラノに紹介している今ではかなり希少となった存在だ。カラブリア料理の核となるは何と言っても「ンドゥーヤ( ’nduja)」 。南イタリアの太陽を燦々と浴びて育った辛い唐辛子をたっぷり入れたスパイシーな豚肉ソーセージだ。この日は、軽い口当たりのカラブリア赤ワインに合わせてンドゥーヤソースをパンに乗せたブルスケッタと、カラブリアの風味豊かな甘い野菜をふんだんに使ったカポナータでスタート。プリモも「辛いもの」と「辛くないもの」の組み合わせで、ドライトマトとタコの赤いソースで和えた「パッケリ(大きなチューブ状のパスタ、13€)」と、「スパゲットーニ・アッラ・タマーロ(11€)」という組み合わせ。「アッラ・タマーロ」は看板メニューで、ンドゥーヤと赤チコリとリコッタチーズで和えた太いスパゲッティだ。「タマーロ(パスタが女性名詞だとタマーラ)」とは、粗野や下品という意味だが、「都会の生活様式に合わせようと努力するが、過剰で下品なやり方をする田舎者」という意味も含まれている。あえてそう命名された代表的なカラブリア料理、「アッラ・タマーロ」は辛さと甘さのバランスが絶妙で絶品だ。セコンドはお肉尽くしで、「タルタール(16€) 」と、「フィレット・ディ・マンツォ・アッラ・ノルマンナ(ノルマンディ風牛フィレ肉、22€)」。フィレ肉の上に乗った羊のチーズが程よいアクセントに。付け合わせの苦味のある野菜との組み合わせも素晴らしい。そして口直しのドルチェにも唐辛子が!ヘーゼルナッツのジェラートを口に入れると、後からジワっと辛さがやってくる。ティラミスは逆にコッテリしたマスカルポーネでなく新鮮なリコッタチーズであっさりと。ドンジョーのメニューはどれも満足のいく味わいで、ミラノに居ながらにして本場の南イタリア料理を気軽な値段で楽しめる数少ない店の一つだ。

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Dongiò
Via Bernardino Corio, 3, Milano
Email:ristorantedongio@gmail.com
営業時間:12:00-14:30, 19:00-23:00 (土曜日は夜のみ、日曜日定休)

イタリア・プーリアとアドリア海を挟むアルバニア、人気上昇中!

アルバニア、という国名は聞いたことがあっても「どこ?」と知らない人も多いと思うが、イタリアからは国内旅行感覚の近さだ。イタリアのカカト、プーリアからアドリア海を挟んで見えそうな位置にある。アルバニアの南はイオニア海に面するギリシャが隣接し自然が多く残っている。人口277万人、1912年にアルバニア王国として独立するまで4世紀に渡ってオスマントルコ支配下だったので国の半分がイスラム教、1/4がギリシャ正教会、 残りがカトリックだが、宗教はとても自由らしく異宗教同士の結婚にも寛容で改宗する必要もないらしい。そんな自由でゆったりした国、そしてイタリアと同じアドリア海に面しているので食もよく似ていて、英語やイタリア語を少し話せる人も多く、人々はとても優しく、夏はイタリア人を中心に多くの観光客が訪れる。その理由は何と言っても物価の安さだ。たらふく食べてグラスワインやカフェも飲んで、一人15€ほど!ミラノの半分から三分の一の感覚だ。しかもユーロが使える店が多く、換金がほぼ不要(ただしクレジットカードはあまり使えない)。更に、安くても素材のクオリティは高く美味しい(残念ながらワインは輸送時の扱いの粗末さでクオリティがキープできず、今はビールの方が美味しい)。対して、イタリアをはじめ人気バカンス地であるギリシャやクロアチアはかなり物価が高くなったこともあり、アルバニアにじわじわと人気が高まりつつある。そして北イタリアの夏が終わってしまう9月でもアルバニアは南イタリア同様、まだビーチが気軽に楽しめる。年金暮らしのイタリア人の移住者も2万人を超え、さらに増えつつある。現在は空港が北のティラーナのみだが、来年?(イタリア人は2-3年と推定しているが)バカンス地として人気なヴローラ(ティラーナ空港から南へ車で2時間半ほど)に新しい空港ができるとあって、ミラノから2時間で直接ヴローラへ飛べるようになれば、益々イタリア人が押し寄せるだろう。それを見越してヴローラは、ホテルやレジデンスが目下建設ラッシュ!ミラノから週末に更にサクッと行けるようになるのもそう遠くなさそうだ。あとは物価があまり上昇しないことを祈るのみ、である。

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左上:ヴローラのホテル、NIMFAのビーチ
右上プール:プリアムホテルの屋上ラウンジ&プールと、ビーチ沿いのプールバー。
右上:ヴローラから見えるサザン島。ドナルド・トランプの娘婿が10月から99年間所有権を買ったそう。
右下:サンセットビーチバー。真夏はサザン島に太陽が沈む。
左下:木造の橋を渡っていく島に建てられた修道院。周辺には牛や馬、羊がのんびりと戯れている。

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左下&左上:ホテルNIMFAのレストラン。魚介が美味しい。
上真ん中:魚介が美味しいレストラン Restorant Tradicional Varka
右上&下真ん中:山を少し車で登ったところの肉専門店。写真は山羊の炭火焼。ラムのローストも絶品。店先で地元のハーブやハチミツが売られている。Restaurant Apollonia, Ilogora

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オスマン帝国時代から愛されるトルコ伝統菓子「バクラヴァ」や「カダイフ」などはどこで食べても美味しい。

上:ティラーナの空港から歩いてすぐの素朴でとても美味しいホームメイドの店、Local Bimi。言葉はあまり通じないが、とても親切で自家製ローズジュースをご馳走してくれた。
下:ヴローラの繁華街にある人気店「イカイ」

ミラノで「バクラヴァ」や「カダイフ」をアラビアンコーヒーと楽しめる「Mourad (ムラト)」

1年前にオープンしたアラブ菓子のカフェ・パスティチェリア「ムラト」。地下鉄赤線、デ・アンジェリ駅とロレート駅、そして黄色線の少し郊外になるマチャキーニ駅近くに3店舗を展開する。ミラノはアラブ系住民が多いとはいえ、専門の菓子店は初めてで人気を呼んでいる。中東のさまざまな国からインスパイアされバラエティに富んだスイーツはどれもラマダン期間中にも大人気だ。モハメッドとマリアム・ムラトの母親が、街の様々なアラブ人肉屋のためにお菓子を作り始めたところから物語は始まる。郊外で製造している一家は、パンデミックも乗り越え、常に約30種類のスイーツを揃えている。例えば、「バクラヴァ」は、フィロという極薄の生地で蜂蜜に浸したピスタチオやナッツを詰めたもの。「バクラヴァ・ワルバット」、「バクラヴァ・ロール」、細麺状の生地の「クナーファ」、そしてマスカルポーネやクリームを挟みピスタチオを乗せた「カダイフ」もある。イートインの時のカフェは、イタリアン・エスプレッソはもちろん、カップの底に粉が残るアラブ珈琲もある。夜も営業していて食後にちょっとカフェしたいとき営業している店が少ないミラノでは希少で嬉しい存在だ。

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Mourad
Corso Buenos Aires, 86 / Via Carlo Imbonati, 11 / Via Marghera, 53, Milano 営業時間:Buenos Aires店10:00 – 20:30、Imbonati店 10:00 – 23:00、Marghera店 10:00 – 0:00 (無休)

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